天空の夢

真夏の夜の夢パート1
真夏の昼の夢真夏の暁の夢秋の長夢
真夏の夜の夢パート2
真夏の夜の夢 総集編

2016年夏、馬場島から劔岳、立山、五色ヶ原、薬師岳を縦走しました。
そして、今回から始まる【夢編】について考えました。時間はたっぷりです。五色ケ原から薬師岳にかけて天空の縦走路を歩いていると、ふと天空の夢というタイトルが浮かびました。
これで行きます。
もちろん、夢の中の事ですから、現(うつつ)の事ではありません。では、夢の中へ入っていきましょう。

今年の夏、早月尾根-劔岳-立山-室堂-五色ヶ原-薬師ヶ岳-折立のロングトレイルで、果てしない真夏の夜の夢をみました。
真夏の夜の夢は、RCVS-amygdala/locus ceruleus hypothesis(可逆性脳血管収縮症候群-扁桃体/青斑核仮説)-入浴・シャワーに誘発されたRCVS-についてです。

プロローグ 前泊(富山駅前)編
2016/07/28

RCVSの患者様を診させていただいて、それからDucros A先生、Chen SP先生の論文を読んで、既に数年が経ちます。最近、両先生の新しい論文を読みました。
医療というものは進歩し続けるものですが、RCVSに関してはあまり進んでいないようです。もっとも、私が読む論文が、両先生の論文に偏っているのも事実です。ましてや、日本の論文などpubmedでは手に入らないので目にすることはありません。
夢の中で、RCVSについて考えてみることにしました。
(今回は、入浴・シャワーに誘発されたRCVSについて考えてみることにしました)


RCVSについて、既にわかっていることを列挙します。

  1. 突然の激しい頭痛(雷鳴頭痛)により発症。
  2. 雷鳴頭痛は、最初の1-2週間に平均4回繰り返す。
  3. 突然の激しい頭痛の前に何かしらの誘因があることが62%。
  4. 平均年齢42歳。女性に多く、女性:男性=2.2:1の性差。更年期や産褥期に多い。
  5. RCV(reversible cerebral vasoconstriction)とよばれる、可逆性の脳血管の収縮が出現する。
    (constrictionという単語を辞書で引いてみると収縮と出ます。私が目にした範囲で英和辞典には攣縮(れんしゅく)とは出てきません。日本頭痛学会の訳語では攣縮(れんしゅく)と訳されています。きっと奥深い意味があるのでしょう。くも膜下出血後の脳血管攣縮は、vasospasmです。英語で、異なるものとして表記されており、ここは夢の世界なので単純に収縮と表記します。)
  6. 脳血管収縮は雷鳴頭痛の出現より遅く出現し、そのピークは16.3日で、3ヵ月以内に改善する。頭痛が消失するのは16.7日とされています。
  7. RCVSは、くも膜下出血、脳出血、PRES、脳梗塞を合併することがある。
  8. 症状は、頭痛の他に、高血圧、痙攣、神経脱落症状などがある。などなど・・・・・・・・・

ゆっくり眺めてみると、RCVSの問題点は、雷鳴頭痛と可逆性脳血管収縮の2つです。その関係はどうなっているのでしょうか。
まるで鹿島槍ヶ岳の双耳峰のようです。どちらかを立てるわけにはいきません。
①何故、雷鳴頭痛が起きるのでしょうか?
②何故、可逆性の脳血管収縮が起きるのでしょうか?
夢の中で、この二つの問題を考えていくと、答えは扁桃体と青斑核ということになりました。
何故、扁桃体と青斑核なのでしょう。

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繰り返す雷鳴頭痛(その1) 早月小屋編
2016/07/29

今日の山小屋は早月小屋です。

私が、頭痛外来を佐世保で開設したのは、わずか6年間です。
6年間で多くの患者様を診させていただきました。感謝の念に堪えません。
最後の半年間は、新患の患者様の診察は遠慮させていただきました。頭痛診療には継続が大切だからです。
6年間の頭痛外来の終盤にRCVS(確診)の人を4人診させていただきました。
初めに、同じ頃に入浴関連頭痛の患者様が2人みえました。RCVSの疑い(ICHDⅢ)まで拡げると枚挙に暇がないくらいたくさんの方を診させていただきました。

夢の中でイメージを膨らませながら、架空の人物に登場して頂きます。 名前は、ひとりの方はツルギさん、もう一人の方をホダカさんです。その他の登場人物として、ドクターはジャム・タルム(ジャンダルムを登ったことを自慢しています)、ナースはマリーとサッチー、テクニックは、イマダーさんとシルバーさんです。


最初にツルギさんを紹介します。ツルギさん、もちろん、剱岳には登ったことはありません。40代後半、いわゆる更年期の女性です。
数年前に大腸の疾患があったそうです、その日の夜も、胃腸の具合が悪く、いつもより遅くに夕食を摂っています。22時頃にお風呂に入り、突然の激しい頭痛、嘔気、嘔吐が出現しました。近くの救急病院を受診し、CTでは異常なしと説明を受けて帰宅しました。ロキソプロフェンだけ処方されたようです。イマドキ、こんな病院もあるのですね。
翌日、夕方にシャワーを浴びて顔を洗っていると、また激しい頭痛が出現しました。
ツルギさん、今度は、ジャム・タルム医師を受診しました。意識は清明、神経脱落症状なし、項部硬直無し。
既往に、前兆のない片頭痛があります。
MRIでは、くも膜下出血や脳出血、脳梗塞などの異常はありませんでした。MRAでは、脳動脈瘤や椎骨動脈解離などはありませんが、両側性の分節性の脳血管収縮を認められました。これは、前大脳動脈や中大脳動脈、後大脳動脈全てにみられました。ジャン・タルム医師は、それまで、RCVSをみたことがなかったので、診察室のMRAの画像をみながら、これは何かの間違いと考え、真直ぐにMRI撮影室に走りました。MRIテクニックのイマダーさんとシルバーさんと顔を見合わせ、やはり、アーチファクトなどではなく、脳血管収縮であることを確認しました。ジャン・タルム医師は、仄かな入浴関連頭痛の記憶を必死に思い出していました。
ツルギさんには入院して頂き、加療をつづけました。ツルギさんは、一生、お風呂に入らないというわけにもいかないので、経過をみながらお風呂に入ってもらいました。
お風呂の時には、浴室の外には、ジャン・タルム医師が控え、お風呂にはマリー看護師に一緒に入ってもらいました。(注:現在は、誘因となることは避けるようにとなっています)
ツルギさん、シャワーが胸部付近に当たった瞬間に激しい頭痛を訴えました。
発作が出現した時に、ジャン・タルム医師は運よく診察できました。一度だけです。
激しい頭痛で、頭痛におびえた表情です、過換気もみられます。パニック発作のようにもみえます。血圧は上昇していました。


先ず、RCVSの頭痛の特徴を再確認しましょう。

  1. 突然の激しい頭痛(雷鳴頭痛)により発症。
  2. 雷鳴頭痛は、最初の1-2週間に平均4回繰り返す。
  3. 突然の激しい頭痛の前に何かしらの誘因があることが62%。
  4. 平均年齢42歳。女性に多く、女性:男性=2.2:1の性差。更年期や産褥期に多い。

ツルギさんの頭痛をRCVSの頭痛の特徴と照らし合わせてみましょう。

  1. 突然の激しい頭痛(雷鳴頭痛)により発症。(〇)
  2. 雷鳴頭痛は、最初の1-2週間に平均4回繰り返す。(〇)
  3. 突然の激しい頭痛の前に何かしらの誘因があることが62%。(〇)
  4. 平均年齢42歳。女性に多く、女性:男性=2.2:1の性差。更年期や産褥期に多い。(〇)

次にホダカさんを紹介しましょう。20代後半の女性。もちろん、奥穂高岳に登ったことはありません。1か月半前に出産し産褥期。
ある日、頭を洗おうとしてお湯をかけたら、突然、激しい頭痛と腹痛が出現。救急病院を受診し、頭部CTでは異常なく、胃薬を処方されて帰宅されています。翌日、21時、お風呂で、湯船に足をつけたら激しい頭痛が出現、翌々日にも入浴時に激しい頭痛が出現。ジャム・タルム医師を受診しました。意識は清明、神経脱落症状なし、項部硬直無し。問診で、典型的なRCVSの臨床症状ですね。ジャム・タルム医師も迷うことはありません。しかし、慎重に診察をすすめます。CTおよびMRIでは異常なく、MRAでは両側後大脳動脈に両側性に分節性に脳血管の収縮を認められました。ツルギさんほどひどくはありません。ホダカさんの場合は、サッチーがついていました。
入院加療をおこないました。
ホダカさんの頭痛をRCVSの頭痛の特徴と照らし合わせてみましょう。

  1. 突然の激しい頭痛(雷鳴頭痛)により発症。(〇)
  2. 雷鳴頭痛は、最初の1-2週間に平均4回繰り返す。(〇)
  3. 突然の激しい頭痛の前に何かしらの誘因があることが62%。(〇)
  4. 平均年齢42歳。女性に多く、女性:男性=2.2:1の性差。更年期や産褥期に多い。(〇)

流石に夢、お二人ともぴったりです。シャワーを浴びて、突然、激しい頭痛が出現しています。
お湯が当たった場所は、胸だったり、顔だったり、足だったりです。
短期間に突然の激しい頭痛を繰り返しています。
ツルギさんは片頭痛の既往があったり、当日は体調悪く、胃腸の調子がおかしかった。そして更年期。血圧の急激な上昇、恐怖、過換気などパニック発作様。
ホダカさんは、最初は腹痛もあり、産褥期。


RCVSのレビュー論文に戻ってみます。
突然の激しい頭痛(雷鳴頭痛)が、最初の1週間に平均4回繰り返す。
その頭痛の前に何かしらの誘因があることが多く、レビュー論文では、薬剤、お風呂、シャワー、歯に冷たい水が当たる、性行為、ストレス、姿勢の変化、労作、咳嗽、排便、排尿、、、、。
頭痛と可逆性脳血管収縮:普通に考えてみると、三叉神経・頚髄神経および脳血管の問題となります。これにChen SP先生らが報告した交感神経、BDNF、血管内皮など関与するということでしょうか、その他にエストロゲン、エンドセリン-1、セロトニン、NO、プロスタグランジンなどの関与が考えられています。


これらの険しい山々を越えて、雷鳴頭痛も可逆性脳血管収縮も、amygdala/locus ceruleus (扁桃体/青斑核)を原因とします。 シャワー・入浴で約1週間に数回程度繰り返す雷鳴頭痛とamygdala/locus ceruleus (扁桃体/青斑核)をどうやって結びつけることができるでしょうか?
ここから、直感です。
刑事コロンボや古畑任三郎は、刑事の感には頼っていません、緻密な観察力・洞察力があってこそです。
お湯が胸、顔、足にふれて、突然の頭痛が出現する。
そんなことは普通はありません。何かの間違いでしょうか。
何かの間違いで、感覚の場所(足、胸を頭)と種類(温かい・触れたを痛い)を間違えたと結論します。
感覚の場所と種類の2つを間違えた、ちょっと欲張りです。
お湯に触れた感覚の経路を考えてみます。

お湯に触れる経路と雷鳴頭痛の経路の
比較です。

これでは、お湯が触れた瞬間に、お湯の温かさと触感は感じても、突然の激しい頭痛にはなりません。感覚の道筋で間違えるのは難しそうですね。他に間違える道筋を探さなくてはいけません。


何かの触った感覚(触覚)を痛みと感じることは、アロディニアと呼ばれ、広く知られています。
片頭痛においても、アロディニアという概念が、Bursteinらによって報告されています。
一般的なアロディニアと同じなのかもしれませんが、ちょっと違った説明がされます。片頭痛のアロディニアの場合、末梢性感作、中枢性感作という考え方があります。

Bursteinらの提唱した概念です。

シェーマを作ってみました。三叉神経節が感作されると三叉神経第1枝領域に異和感、中枢(脊髄)まで感作されると後頚部まで、中枢(視床)まで感作されると異常感覚が上肢まで拡がります。
こんな感じだと思います。黄色、水色、桃色の色で対応しています。

簡単に説明します。片頭痛発作が起こり、末梢神経が感作されると三叉神経第1枝領域に異和感(ピリピリした感じ、触ると嫌な感じ)が出現することがあります。中枢(脊髄、視床)まで感作されると、異常感覚が、後頚部や上肢まで拡がります。つまり、頭痛発作なのに、頭以外のところまで異常感覚が広がることを示しています。
頭が痛くなって、上肢の異常感覚。なにか似ていますが違います。
足とか胸とかにお湯があたって、突然、頭痛がする、片頭痛でいわれるアロディニアとも違うようです。

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繰り返す雷鳴頭痛(その2) 室堂山荘編
2016/07/30

今日の山小屋は室堂山荘です。
写真は江戸時代から建つ立山室堂。

繰り返す雷鳴頭痛(その1) 早月小屋編で、感覚の道筋を示しました。しかし、痛みは感覚(部位、程度)と情動からなります。
脊髄後角神経細胞から上行する経路は2つに大別されます。
すなわち、感覚経路(sensory/discriminatory pathway)と情動経路(emotional/motivational pathway)です。前者は疼痛の刺激位置(場所)と程度を、後者は疼痛の情動を伝達します。
この2つがあって始めて主観的な痛み(痛い!)が形成されます。
痛みを形成するもう一つの因子、情動はどうでしょう。

おおまかに、黒色は感覚経路で視床を経て
感覚野に到達します。
緑色は、情動経路で、腕傍核を経て扁桃体に到達します。

情動をつかさどるところは、扁桃体、島皮質、前帯状回、前頭皮質などが考えられています。
扁桃体は疼痛の情動をつかさどります。最近は慢性疼痛で注目されている場所の1つです。
扁桃体をみてみましょう。
加藤先生のグループの研究を参考にさせていただきます。

                                        
扁桃体へは、①直接経路と②間接経路から入力があります。

直接経路のほうが、間接経路よりも早く扁桃体に入力します。

扁桃体へは、①直接経路:脊髄神経から、腕傍核でシナプスをかえ、扁桃体(中心核)へ入力する経路、②間接経路:脊髄神経から、視床、大脳皮質を経由して扁桃体(基底外側核)へ、それから扁桃体(中心核)へ入力する経路があります。
直接経路は、脊髄神経から腕傍核外側部でシナプスをかえ、扁桃体中心核へ入力され、間接経路よりも早く扁桃体に入力されます。
扁桃体中心核のなかでも外包部CeCは、侵害受容性扁桃体とよばれ、CeCニューロンの8割が侵害刺激に対して興奮するそうです。つまり、侵害刺激に対する痛みに反応するということです。
この経路は、脊髄/三叉神経脊髄路核-腕傍核-扁桃体路と呼ばれています。
RCVSでは、この直接経路が重要な役割を果たしているのではないでしょうか。
間接経路の場合、大脳皮質や視床を介し複雑な経路で、誤まりが起こりにくいように考えます。間接経路は、大脳皮質や視床を経由することにより、この感覚がどのようなものかを判断できるのではないでしょうか。
直接経路は、内臓感覚で重要な経路とされています。

                   
扁桃体中心核のなかで外包部CeCは、侵害受容性扁桃体と
呼ばれています。扁桃体からは様々な部位へ出力します。

内臓感覚、ツルギさん、ホダカさんどちらもお腹の調子がよくなかった、お腹が痛かった。つまり、扁桃体中心核が刺激されていた状態です。
ツルギさんとホダカさん、その他に扁桃体が刺激される素因はなかったでしょうか。
ツルギさんは更年期で、片頭痛の既往があります。ホダカさんは産褥期。
更年期と産褥期いずれも、エストロゲンが低下しています。エストロゲン低下は、扁桃体の閾値が低下し、刺激を受けやすいと考えられています。
ツルギさんは、片頭痛の既往があり、情動の面で扁桃体が刺激されることが多かったと考えられます。
ホダカさんは、産後1ヶ月半という時期で、幸せ一杯ですが、赤ちゃんのみていく、夜間の授乳など大きなストレスもあったと考えられます。


ここから、夢に登場してくれる役者さんを紹介します。

中心となる、扁桃体、青斑核に注目してください。
脳血管は、脳表血管(軟膜動脈)と穿通動脈(細動脈)を示します。

RCVS amygdala-locus ceruleus hypothesis(扁桃体-青斑核仮説)にいよいよ入っていきます。
お湯がかかる刺激が、脊髄後角、脳幹腕傍核でシナプスを乗り換え、さまざまなストレスでチロチロと燃えた扁桃体中心核へ入力されます。チロチロと燃えた扁桃体中心核は、この入力を誤って嫌な異常な感覚としてとらえます。当初は、この誤った異常な感覚を、突然の激しい頭痛として捉えるのではないかと考えました。感覚の場所と種類の2つを誤って認識するとは、ちょっと都合が良すぎるかもしれません。
もう少し考えてみましょう。
いずれにしても、さまざまなストレスでチロチロとくすぶって発火している扁桃体中心核が、お湯の温覚・触覚を嫌な異常な感覚と誤って捉えることがひきがねと考えられます。

ストレス、疼痛、エストロゲンの低下、腹部感覚などの異常により、
普段の生活の中で扁桃体が刺激されている状態
(1次発火)を示します。

入浴、シャワーで、温かいお湯の信号が脊髄後角に入力され、
腕傍核でシナプスを変えます。

温かい心地の良いお湯の信号をリンゴに例えます。
この信号が、扁桃体に到達します。

扁桃体は、さまざまなストレスにより、
1次発火の状態です。
ここに、温かい心地の良いお湯の信号(リンゴ)が、
入ってきた時に、1次発火している扁桃体は、
誤って心地の悪い信号と捉えます。
心地の悪い信号を爆弾にたとえます。


1次発火している扁桃体は爆弾に火を着けてしまいます。

爆弾は爆発します。
当初は、これを雷鳴頭痛ではないかと考えました。

言い方を少し変えてみましょう。
チロチロとくすぶって発火している(一次発火)扁桃体中心核に、ある種類の刺激(お湯の温覚・触覚)が加わります。この感覚をリンゴとしましょう。その度に一次発火している扁桃体中心核が、その感覚を嫌な異常感覚として誤って捉えます。誤って捉えた嫌な異常感覚を爆弾としましょう。リンゴを爆弾と誤って認識し、爆弾は爆発します(二次発火)。二次発火は、爆弾は爆発するとすぐに消えます。一次発火が続いている間は、二次発火が出現しますが、その都度、消えます。
当初、この二次発火を雷鳴頭痛と考えました。
一次発火(扁桃体中心核)が鎮火していくと、ある種類の刺激が加わってもの、二次発火は起こらず、ある刺激のみで終わります(リンゴはリンゴのまま)。
二次発火はすぐに消えるのですが、この二次発火により、扁桃体中心核はさらに興奮し、扁桃体中心核から、下記のように脳内のいろいろな部位を刺激します。


扁桃体はストレス処理の中心と考えられています。

  1. 扁桃体と前帯状回(ACC)、扁桃体と眼窩前頭皮質(OFC)との間で恐怖の感情が調節され、この回路の過活動で恐怖感情が生じると考えられています。
  2. PAGとの間で、回避行動が調節されると考えられています。回避行動には運動反応であり、闘争か逃走か、脅威下で動けなくなることもあります。
  3. 視床下部との間で、視床下部(傍室核)-下垂体―副腎皮質系を調節します。この系が活性化されるとコルチゾールが増加します。
  4. 腕傍核との間で呼吸が調整されます。腕傍核の活動は呼吸数の増加、息切れ、窒息感が生じます。
  5. 青斑核との間で、自律神経系出力が調整されます。この回路が長期間過活動になると動脈硬化、心虚血、血圧変化、心拍変動の減少、突然死のリスクが増すと考えられています。
  6. 海馬との間で、記憶が蓄えられます。海馬に蓄えられた記憶が扁桃体を刺激して恐怖反応を惹起することがあります。
扁桃体はストレス処理の中心と考えられています。
普段の生活の中で、さまざまなストレスにより
扁桃体が刺激されています。
この刺激が強くなると、扁桃体は、
前頭前野、PAG、視床下部、腕傍核、青斑核、海馬など
脳のいろいろな部位を刺激します。
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繰り返す雷鳴頭痛(その3)と可逆性脳血管収縮について
スゴ乗越小屋編
2016/07/31

今日の山小屋はスゴ乗越小屋です。

次は、可逆性脳血管収縮です。
脳血管収縮をきたす物質には、ノルアドレナリン、エンドセリン、セロトニン、、、、があります。
とりあえず、可逆性脳血管収縮は、ノルアドレナリンにより生じるとします。
扁桃体中心核は前述したように青斑核を刺激します。
青斑核は、ノルアドレナリンを放出します。
ノルアドレナリンが脳血管収縮を惹起します。
こんなに簡単に行く筈もありませんが、青斑核からノルアドレナリンがリリースされ脳血管収縮を惹起する、ここに結論をもっていきます、夢ですから。


脳血管の収縮と拡張の機序を振り返ってみましょう。

脳血管は、extrinsic innervationとintrinsic innervationの2つの神経系によりコントロールされています。

脳血管は、extrinsic innervationとintrinsic innervationの2つの神経系によりコントロールされています。
Willis動脈輪とその分岐の比較的太い脳軟膜動脈には神経線維が確認されており、ここに分布する神経線維は、その起源も脳実質外に存在しています。この神経系は、extrinsic innervationといわれています。これに対して、脳実質内の細動脈や毛細血管の支配神経は、神経核を起源とし、走行および起源が脳実質内に存在し、この神経系はintrinsic innervationといわれています。
(でも、どこの世界にも、あやふやなところはあるのではないでしょうか、例えば、extrinsic innervationとintrinsic innervationが重なったり、一部、遠いところまでのびていたり?都合よすぎますか。)

extrinsic innervation:
脳血管収縮神経:上頚交感神経節を起源とします。Willis動脈輪前半部を中心に脳軟膜動脈および脳実質内の口径15μm程度の細動脈にまで分布するそうです。神経伝達物質はノルアドレナリンです。 なおNPYは持続的な強い血管収縮作用を有することが知られています。
脳血管拡張神経:翼口蓋神経節、内頚動脈小神経節、耳神経節を起源とし、神経伝達物質はAchです。その他に、VIP、NOなどがあります。
感覚神経:脳血管を支配する感覚神経系の主な起源は三叉神経節とされています。特にWillis動脈輪前半部は、同側の三叉神経第1枝から支配されています。後半部は脊髄神経後根神経節の支配と考えられています。感覚神経は、血管拡張や脳血流増加作用に関与し、血管径や脳代謝状態をモニターし脳神経核に伝えるのではないかと考えられています。

脳血管(脳表動脈:pial artery/leptomeningeal artery)は上頚交感神経節により調整されます。この神経は内頚動脈に沿って上行します。Willis動脈輪付近は近位で、末梢の脳表血管では、距離が遠くなりますね。そして上頚交感神経節からの支配は、内頚動脈系ではない後大脳動脈領域ではpoorになります。

extrinsic innervationの上頚交感神経節は、脳表血管(軟膜動脈)をコントロールし、
intrinsic innervationの青斑核からは、穿通動脈(細動脈)をコントロールします。

intrinsic innervation:
脳血管収縮神経:青斑核(locus coeruleus)を起源とし、脳実質内の細動脈や毛細血管に分布しているそうです。神経伝達物質はノルアドレナリンです。青斑核刺激により、脳実質内血管は収縮するそうですが、脳血管抵抗に重要な脳軟膜血管は収縮しないそうです。(太田先生の論文です) なんと!
脳血管拡張神経:Meynert核を起源としAchを神経伝達物質とします。


上記の図は、どこかで似たようなものをみたことあります。
そうです、片頭痛の病態メカニズムを示す有名な図です。CSDが片頭痛を惹起するというものです。

三叉神経血管系による片頭痛が
生じる機序を示します。
よく似ています。

Ducros先生は繰り返す雷鳴頭痛と可逆性脳血管収縮をどう考えておられるでしょうか。
2012年の論文をみてみましょう。雷鳴頭痛も可逆性脳血管収縮も三叉神経第1枝および第2脊髄神経後根により生じると考えています。
雷鳴頭痛は、通常は第1週に消失します、これは、large and medium-sized vesselsの脳血管収縮のピーク以前です。しかも、脳血管収縮は、頭痛が消失した後も数週間持続するのです。large and medium-sized vesselsの脳血管収縮が雷鳴頭痛の原因ではないようです。Ducros先生も、雷鳴頭痛と脳血管収縮の時相差について困惑されているようです。
この論文の中で、脳血管収縮は、distal arteries(末梢部の脳血管)から始まり、Willis輪の枝(中枢側の脳血管)に進むと報告しているのです。本当でしょうか?。
その機序として、雷鳴頭痛は、脳軟膜に存在する三叉神経の刺激により生じ、脳血管収縮は、末梢で生じ、その血流異常に反応して、large cerebral arteiesのsecond segment、first segmentに進む、(末梢の血流異常に反応して)、つまり中枢に進むと考えています。
ちょっとっ苦しいですよね。
兎に角、雷鳴頭痛が先で、脳血管収縮は後に出現し、時相にずれがあるのです。
Ducros先生に頼らずに別の切り口で考えてみましょう。


当初は、体に触れたお湯の感覚を、さまざまなストレスで少し刺激を受けていた扁桃体中心核が突然の頭痛と感じ、さらに扁桃体中心核からの信号が青斑核に伝わり、脳の細動脈(arteriole)を収縮するというストーリーを考えました。
つまり、扁桃体中心核の情動の部分だけで突然の頭痛が出現するという考え方です。
もう一つの別の考え方ができます。さまざまなストレスで刺激を受けていた扁桃体中心核が、体に触れたお湯の感覚を情動としてとらえ、扁桃体中心核がさらに興奮し、青斑核を刺激し、青斑核からノルエピネフリンが放出され、脳の細動脈(arteriole)が収縮します。
これにより、三叉神経血管系が刺激され突然の激しい頭痛が惹起されるという考え方です。
こちらの方が、痛みの機序や痛みの場所などスマートに説明できます。
扁桃体中心核への刺激が繰り返されると、その度に、この経路が繰り返し惹起され、短期間に突然の激しい頭痛が繰り返されます。
青斑核は繰り返し刺激され、長期増強(LTP)のようなものが引き起こされ、青斑核から脳表動脈(pial artery/leptomeningeal artery)にまで伸びていた一部の神経を介して、脳表血管の血管平滑筋を収縮させます。
ついには、これが分節性の収縮を引き起こします。
長期増強(LTP)のようなものが消失すると、脳血管(脳表動脈:pial artery/leptomeningeal artery)の収縮は改善します。
一寸、都合のよい解釈を述べてみます。青斑核からのピーク状の刺激は、細動脈(arteriole)を収縮させます。一部は、脳動脈(脳表動脈:pial artery/leptomeningeal artery)にまで到達しますが、脳動脈(脳表動脈:pial artery/leptomeningeal artery)の平滑筋が収縮することはありません。一方、青斑核からの長期増強(LTP)のような刺激は、到達した脳動脈(脳表動脈:pial artery/leptomeningeal artery)をゆっくりと長い間、収縮させますが、細動脈(arteriole)の収縮を惹起することはありません。
脳病変に関しては、細動脈(arteriole)での収縮に際しては、脳表の出血性病変(くも膜下出血や脳出血)やPRESを引き起こすことがあり、脳血管(脳表動脈:pial artery/leptomeningeal artery)での狭窄では脳梗塞が引き起こされるのではないでしょうか。

青斑核からの神経がノルアドレナリンをリリースし、穿通動脈(細動脈)は狭窄しています。図もそうなっているのですが、みえますか。
ルーペならわかると思います。

三叉神経血管系が刺激されています。
三叉神経血管系が刺激され、雷鳴頭痛が惹起されます。


青斑核からのノルアドレナリンのリリースがなくなると
三叉神経血管系への刺激はなくなり、
雷鳴頭痛も消失します。
繰り返された雷鳴頭痛により、
青斑核では長期増強のようなものが惹起されます。
余談ですが、扁桃体から前頭前野に伝えられた信号により、
今度は前頭前野から扁桃体に恐怖信号ではないよと
信号が入り、扁桃体は鎮火されるのかもしれません。

雷鳴頭痛は消失しています。
青斑核の長期増強のようなものによる信号は、
脳表血管にまで伸びていた一部の神経を経由して、
脳表動脈の血管平滑筋につたわり収縮します。
このため、脳表血管の分節性収縮が惹起されます。

3ヵ月経過して治った状態です。
MRAでみればわかるのですが、脳表動脈は、狭窄していません。
顕微鏡でみればわかるのですが、穿通動脈は、狭窄していません。
扁桃体も青斑核も静かな状態となっています。
静かな静かな脳の状態、脳の血管の状態です。
温かいお湯は心地よいお湯のままです。
                    

                    

最後に登場してくれた役者さんに勢ぞろいしてもらいます。

登場していただいた皆様、お疲れ様でした。
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エピローグ 太郎平小屋編
2016/08/01

太郎平小屋は通過してしまいました。
代わりにきれいな五色ヶ原山荘。

真夏の夜の夢も終わりに近づきました。
忘れないうちに、結論は列記します。

  1. RCVSの病態には扁桃体が重要な役割を果たし、様々なストレスが基盤となっているのではないかと考えられます。
  2. RCVSにおける雷鳴頭痛は、扁桃体中心核により形成されます。
    これは、扁桃体中心核が刺激された結果として雷鳴頭痛が惹起される可能性、あるいは、扁桃体中心核から青斑核が刺激され、Intrinsic innervationが刺激され、細動脈(arterioke)が収縮し、三叉神経血管系が刺激され雷鳴頭痛が惹起される可能性が考えられます。
  3. RCVSにおける脳血管収縮は、青斑核からのノルアドレナリンがリリースされ、intrinsic inervationを刺激し、細動脈(arteriole)が収縮し、引き続き、脳血管(脳表動脈:pial artery/leptomeningeal artery)の狭窄が徐々に形成されていくと考えられます。
  4. これは真夏の夜の夢です。ここは大切です。

真夏の夜の夢 追記
真夏の夜の夢から醒めると現実が待ち受け、日々の生活が始まります。
昨年、槍穂(ジャンダルム含む)3000m峰完全制覇の際、西穂で、雑誌ワンダーフォーゲルにインタビューを受けました。タイトルは、岩稜を登るおじさんだったと思います。今年、雑誌に載ると聞き、心待ちにしていましたが、ボツとなったようです。がっかり。
夢はゆめのままで。
RCVS-amygdala/locus ceruleus hypothesis(可逆性脳血管収縮症候群-扁桃体/青斑核仮説)、
私にとって興味深々でした。
私が一寸考えても、沢山の矛盾が、あります。
RCVSの真実はどこにあるのでしょうか。
真夏の夜の夢、続きは、またどこかの山で。
夢は、山々を駆け巡る。


今回、参考にさせていただいた文献を示します。
また、画像を一部変更して引用させていただいています。

著者タイトル
1Ducros AReversible cerebral vasoconstriction syndrome. Lancet Neurol 2012:11:906-917
2Ducros AHemorrhagic manifestation of reversible cerebral vasoconstriction syndrome. Frequency, features, and risk factors. Stroke 2010: 41:2505-2511
3Chen SPReversible cerebral vasoconstriction syndrome: current and feature perspectives. Expert rev. Neurothe. 2011: 11: 1265-1276
4Chen SPMRA in RCVS.ANN Neurol 2010: 67: 648-656
5Calabrese LHNarrative review:RCVS
6RCVSによる頭痛.診断基準.国際頭痛分類第3版(医学書院)2014:75-76
7Burstein RMigraine:multiple precesses, complex,pathophysiology.The Journal of Neuroscience 2015:35:6619-29
8Stephen M.StahlStahl's Essential Psychopharmacology. fourth edition.Chapter 10. Chronic pain and its treatment.
9Apkarian AVHuman brain mechanisms ob pain perception and regulation in health and disease.Euro.J.Pain 2005:9:463-484
10加藤総夫痛みと扁桃体.クリニカルニューロサイエンス 2014: 32: 637-639
11加藤総夫痛みと負情動.ペインクリニック 2013: 34: 1059-1067
12半場道子慢性疼痛と脳.practice of Pain Management 2010-12:1:32-36
13鈴木則宏脳血管の神経支配.脳神経 1993:45: 6-19
14鈴木則宏脳血管. 頭痛診療ハンドブック(中外医学社) 2009: 10-12
15堀田晴美脳血管の神経性調節. クリニカルニューロサイエンス 2014: 32: 1345-1348
16Iadecola CFrom CSD to headache: A lonf and winding road. Nature Med 2002: 8:110-112
17Ohta KLocus coeruleus stimulation exerts different influences on the dynamic ghanges of cerebral pial and intraparenchymal vessels. Nuerol Res 1991: 13: 164-167
18Stephen M.StahlStahl's Essential Psychopharmacology. fourth edition.Chapter 9. Anxiety disorders and anxiolytics.
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2016年の夏、早月尾根-劔岳-立山-室堂-五色ヶ原-薬師ヶ岳-折立のロングトレイルで、果てしない真夏の夜の夢をみました。スゴ乗越小屋では、天空に無数の星を眺め、いくつもの流れ星をみることができました。流れるのは一瞬です。
みた夢はお風呂やシャワーで誘発されるRCVSについて、RCVS-amygdala/locus ceruleus hypothesis(可逆性脳血管攣縮症候群-扁桃体/青斑核仮説)でした。しかし、RCVSはお風呂やシャワーで誘発されるものばかりではありません。
福岡市内は連日の猛暑日です。クマゼミもアブラゼミも鳴いています。
現在の仕事は、お昼休みがきちんとあって、ついつい眠ってしまいます。
クーラーがよくきいた部屋で、DVDを聴きながら(ポータブルDVDを閉じて聴いています)、真夏の昼の夢で、お風呂やシャワー以外で誘発されるRCVSについて、RCVS-amygdala/locus ceruleus hypothesis(可逆性脳血管攣縮症候群-扁桃体/青斑核仮説)を考えてみます。
さてどうなるのでしょうか。
眠くなってきました。


                     

ICHD3では、RCVSの診断基準の中で誘因として、性行為、労作、ヴァルサルバ手技、感情、入浴やシャワーがあげられています。
一方、Ducros先生の論文では、①性行為、②排便、③ストレス、感情、④労作、⑤咳、⑥いびき、⑦排尿、⑧入浴・シャワー、⑨水泳、⑩笑う、⑪急に腰を曲げる、などが挙げられています。そして、別の表には、⑫産褥期、⑬血管作動性薬剤、⑭カテコールアミン産生腫瘍、⑮免疫製剤の投与・輸血、⑯その他が挙げられています。表にしてみます。
この表を眺めてみて、何か関連があるのでしょうか?よくもまあ、こんなにもたくさん並べてあります。
強引に次のように分類してみました。
①性行為・報酬系、②いきむ行為(すなわちヴァルサルバ手技)、③お風呂、シャワー、④ストレス・感情、⑤高血圧、⑥その他に分けられると思います。

性行為、報酬系 ヴァルサルバ手技 入浴、シャワー ストレス、産褥期 高血圧関連 その他
                                                 
⑬-1
⑬-2
⑬-3
⑬-4
⑬-5
⑬-6
⑬-7
⑬-8
性行為
排便
精神的ストレス(stressful)、感情的な状態(emotional state)
労作(physical exertion)
いびき
排尿
入浴、シャワー
水泳
笑い
急にかがむ(suddeen bending down)
産褥期
薬剤(vasoactive drugs)など
不法薬剤(大麻、コカイン、アンフェタミン、methyleneoxymethamfetamine、LSD
抗うつ剤(SSRI、SNRI)
α-sympathomimetics(鼻充血除去剤:フェニルプロパノールアミン、エフェドリン)
トリプタン、エルゴタミン
麦角アルカイド、ブロモクリプチン、リスライド
ニコチンパッチ
朝鮮人参、ハーブ
大量の飲酒
カテコールアミン産生腫瘍
免疫抑制剤・輸血
その他
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性行為、脳内報酬系
2016/08/12

性行為、脳内報酬系によって誘発されるRCVSについてです。とても難しい問題です。最初から躓いてしまいました。
現在のところ、扁桃体は負の情動の中枢と考えられています。一方、正の情動は、あまり研究されていません。性行為では、負の情動の中枢と考えられている扁桃体は、PET検査で低い信号を示され、あまり活動していない(?)と考えられています。
RCVS-amygdala/locus ceruleus hypothesis(可逆性脳血管攣縮症候群-扁桃体/青斑核仮説)敗北宣言というところでしょうか。
でも夢ですからなにかしらの抵抗をしてみましょう
昼間にみる夢ではなさそうなので、別のところ真夏の暁の夢。で

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ヴァルサルバ手技、いきむ行為
2016/08/12

ヴァルサルバ手技、いきむ行為により誘発されるRCVSについてです。ICHD3では、RCVSの診断基準の中で誘因のひとつにヴァルサルバ手技が挙げられています。
ヴァルサルバ手技とはどんな手技でしょう。ここでは、自律神経機能検査第4版(文光堂、p149)よりヴァルサルバ試験を引用させていただきます。
原理・目的:圧受容器を介する検査で、胸腔内圧を変化させ、これに対応して起こる血圧と心拍の変化から自律神経の機能を評価する方法です。
方法:息を胸腔内いっぱいに吸った後、マウスピースや20mlの注射筒を口にくわえ、これに息を吹き込み40mmHgの圧を15秒間保ちます。
基準値と判定:この手技による一連の血圧変動はⅠ-Ⅳ相に分けられ、第Ⅳ相では、胸腔内圧が解除され、反射性に交感神経活動が亢進し一過性に血圧が上昇し検査前の値を越え(overshoot)します。この血圧上昇に対する圧受容器反射によって徐脈が生じ、検査前の値以下になります。交感神経の指標として第Ⅳ相の血圧から検査前の血圧の差があげられ、副交感神経機能の指標として第4相の減少した心拍数と負荷前の心拍数の差があげられます。


上記がヴァルサルバ試験です。
ICHD3に記載されているヴァルサルバ手技とは、これに準じた行為と考えらられます。すなわち、いきむ行為です。Ducros先生の論文の中の誘因では、排便、労作、咳、いびき、排尿、水泳、笑う、急にかがむなどが相当するのではないかと考えました。排尿は違うのかもしれません、笑うは大笑いを想像しました。どこかの論文で、誘因に歌うとあったのですが、これもいきむ行為なのかもしれません。
ヴァルサルバ試験の中で圧受容器反射とありました。
この反射経路は、内頚動脈洞受容体から舌咽神経を介し、大動脈受容体から迷走神経を介し、延髄孤束核(NTS)に入力されます。延髄血管運動中枢を介し血圧がコントロールされます。
孤束核は、内臓求心性系神経が入力するところでもあります。孤束核からは腕傍核を介し、扁桃体中心核に入力されます。

パニック障害で考えられている神経機序を示します。
内臓求心性神経が孤束核に入力し、腕傍核を経て扁桃体中心核へ入力します。

あとの過程は、入浴・シャワーで誘発されるRCVSで考えたことと同じです。
いきむ行為があると、ヴァルサルバ手技で示した機序で圧受容器刺激され、これが孤束核へ入力されます。腕傍核を経て扁桃体中心核が刺激され、青斑核が刺激されていく。それから穿通動脈が狭窄し、三叉神経血管系が刺激され雷鳴頭痛が惹起され、一方では可逆性脳血管収縮が形成されていくという考え方です。

いきむ行為、すなわちヴァルサルバ手技と同じ行為です。ヴァルサルバ手技で示した機序により、
大動脈弓や頚動脈洞の圧受容器が刺激され、これが孤束核へ入力されます。
ここから上記で示したように腕傍核を経由し扁桃体中心核が刺激されます。
あとは、入浴・シャワーで誘発されるRCVSと同じような機序で青斑核が刺激され穿通動脈が
狭窄し、三叉神経血管系が刺激され雷鳴頭痛が惹起される。
一方では可逆性脳血管収縮が形成されていくという考え方です。

しかし、Ducros先生があげた【いきみ】関係の誘因は、排便、労作、咳、いびき、排尿、水泳、笑う、急にかがむなどは当に日常生活そのものです。
ということは、やはり、前もって、扁桃体の準備(一時発火)が必要なのではないでしょうか。
2016年のDucros先生の論文” The typical thunderclap headache of RCVS and its triggers”の6ページにある症例が記載されていました。紹介します。
夫のお葬式で、夫の墓に花を手向けようと腰をかがめた時に雷鳴頭痛が出現しRCVSが出現した症例です。
夫のお葬式という人生の中でも最大の精神的なストレスのなか、腰をかがめるといういきむ行為が加わった状況と考えられます。

いきむ行為、ヴァルサルバ手技に誘発されたRCVSについて、RCVS-amygdala hypothesis(可逆性脳血管収縮-扁桃体仮説)、終了します。

なお、労作は、論文のなかではphysical exertionとあります。前版のICHD2では、一次性労作性頭痛で、重量挙げが労作のひとつに挙げられていました。
三宅選手銅メダルおめでとうございます。すごいいきみありました。ということを考えて労作はいきむ行為、ヴァルサルバ手技に組み込みました。

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ストレス、感情
2016/08/12

ストレス・感情です。
まさに、扁桃体は発火している状態です。負の情動の中枢です。
そして、扁桃体は、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、体性感覚の全て感覚が入ってきてきます。そして記憶の中枢である海馬もすぐお隣です。
一次発火している扁桃体に、さまざまな感覚が入ってきて、これを一次発火している扁桃体が誤って捉えて二次発火する。
あとの過程は、入浴・シャワーで誘発されるRCVSと同じ機序です。

産褥期は、エストロゲンが低下し扁桃体の閾値の下がっている状態です。夜間も赤ちゃんに母乳をやり不眠も重なります。育児のストレスの時期でもあります。ストレス・感情のところに分類しました。さまざまな刺激入力が入ってきます、スマホは光刺激になりますし、もちろんPCは視覚刺激になります。

片頭痛の人は、光過敏、臭過敏、音過敏、気圧過敏など、さまざまな感覚に過敏傾向をお持ちです。また、痛みそのものが扁桃体を刺激している状態です。
ということを考えると、トリプタンやエルゴタミン製剤の使用がRCVSを惹起するというよりも片頭痛の人は、扁桃体が刺激されており、RCVSが起きやすい状態ではないでしょうか。

SSRIやSNRIなどの薬剤がRCVSを誘発しているのかもしれません。が、うつの人は、扁桃体が刺激されている状態と考えられないでしょうか。

                    

このグループは、ストレス・感情により扁桃体がより強く刺激されている状態ではないかと考えられます。また、産褥期や更年期の方ははエストロゲンが急激に低下する時期で扁桃体の閾値が低下し、刺激を受けやすい状態と考えられます。つまり、このグループは一次発火という状態よりも、1.5次発火とか1.8次発火という状態に陥っていると考えられます。
この状態で扁桃体に視覚、聴覚、味覚、嗅覚、体性感覚などが入力し、より強い刺激として捉えられ、RCVSが発症するのではないでしょうか
実は、入浴・シャワーに誘発されたRCVSを発症されたツルギさん、入院中にスマホの画面も怪しいなどと仰っていました。
そういえば、片頭痛の人の脳を、Burstein先生がHyperexitable brain、Maleki先生がMaladaptibe brain responses to stressと表現されていました。似通った状態ではないでしょうか。


【閑話休題】
私は私自身を普通一般の医者と思っています。脳神経外科医師をやめ、頭痛外来をやめ、火野正平さんがよく叫んでおられる人生下り坂最高-という状況です。 昨年、一般にいわれるモンスターペイシャント(?)に対応することがありました。その方と面接する前の晩に、そのことを考えると動悸がして胸に圧迫感があり息苦しくなることがたびたびありました。若い頃はもっと厳しい状況下でもそのようなことは全くありませんでした。経験は圧倒的に現在のほうが積んでいるでしょう、恐らく、男性の更年期に入っていて、扁桃体の閾値が下がっているのだと思いました。
現代社会においてストレスのない人はいないと思います。そして細かなストレスを病院に行って話すことはないと思います。
例えば、私が、夜に胸に圧迫感があり息苦しくなることがたびたびあり寝苦しかったのですと病院に行って話したとします。病院では血液検査、心電図、胸写、心エコーなどの検査がなされ、異常はありませんと診断されます。でも、原因は私自身にはわかっています。その方が退院されると全くそのような症状はなくなるのですから。普通の診察で、ここまでの内容を患者(私)は話しませんし、尋ねられもしません。
私が行なっていた頭痛外来では、いろいろなことをおききました。一般的な頭痛外来でもそうだと思います。普段と違う頭痛、いつもより酷い頭痛、最近ひどくなってきた頭痛、、、、一般的な頭痛診療の他にいろいろな事を尋ねます。職場の配置換えがあったり、とても忙しかったり、職場内の人間関係だったり、そのことを程よく紐解いてあげるだけでも頭痛がよくなったりすることがありました。頭痛外来は、検査や投薬も大事ですが、それよりも大切なことはその前後にあるのかもしれません。

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高血圧、その他
2016/08/12

高血圧の項目を設けました。カテコールアミン産生腫瘍です。高血圧が惹起されている状態です。
高血圧性脳症に近い状態が惹起されているのではないでしょうか。であれば、LCからのノルアドレナリン分泌を考慮する必要はなく、脳の血管のなかで、脳表動脈(軟膜血管)、穿通動脈に異常をきたしているのかもしれません。
そしてその他の項目も設けています。これらは種々雑多すぎて省略します。一つ一つ、機序を考えることもできますが、お昼休みでは時間が足りなくなってしまいました。

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性行為・脳内報酬系により誘発されたRCVS
2016/08/28

性行為により誘発されたRCVS、違法薬剤(大麻、コカイン、ヘロイン、アンフェタミン、LSDなど)によるRCVS、大量飲酒によるRCVSを、脳内報酬系によって誘発されるのではないかと考え、一つのグループとして考えました。
RCVS-amygdala/locus ceruleus hypothesis (可逆性脳血管攣縮症候群-扁桃体/青斑核仮説)では、これまで扁桃体を負の情動の中心として捉えてきました。
しかし、脳内報酬系によって誘発されると考えたRCVSは、これまでとは全く違います。何故なら、脳内報酬系は、正の情動、快、楽しみ、となります。これまでとは全く逆です。
RCVS-amygdala/locus ceruleus hypothesis (可逆性脳血管攣縮症候群-扁桃体/青斑核仮説)の敗北宣言と言っていいでしょう。夢の世界ですから少しだけ粘ってみましょう。
脳内報酬系によるRCVS-amygdala/locus ceruleus hypothesis (可逆性脳血管攣縮症候群-扁桃体/青斑核仮説)として、脳内報酬系→扁桃体→青斑核を考えてみました。
今回は、性行為により誘発されたRCVSによるにチャレンジしてみましょう。


                    

私は、性行為によって誘発されたRCVSによる頭痛の患者様を診たことがありません。
性行為によって誘発された雷鳴頭痛は診たことがあります。診察室で性行為について根ほり葉ほりおききする事は難しいと思います。性行為によって誘発された雷鳴頭痛については、患者様が、お話しされることをおききするというスタンスでした。
お話を思い出してみると、最近できた彼女、いつもと違うパートナー、最近外人さんと再婚したなどと、印象として、男女を問わず、日常的ないつもの性行為による刺激よりも強い刺激なのかなあという印象でした。
別の言い方をすると、いつもの性行為でで得られる感覚よりも大きな感覚のようでした。脳内報酬系の世界では、【行動を起こす時に得られる期待される報酬の量】と【行動を起こした結果、実際に得られる報酬の量】の誤差(報酬予測誤差)といいます。これが、予想しない、あるいは予想以上の報酬であった場合、その行動は強化されます。
脳内では、腹側被蓋野(VTA)からドーパミン作動性ニューロンが側坐核(NAc)で多くのドーパミンを放出され、その結果、快感を得るということです。
しかし、pubmedをひいてみても、性行為に伴う脳内報酬系の研究はほとんどありません。
それでは、性行為にとらわれないで、脳内報酬系についてみてみましょう。


                    

-脳内報酬系について-
脳内報酬系は、高等動物にも原始動物にもあるそうです。
1954年にジェームズ・オールズとピーター・ミルナーが発見しました。ラットの実験です。レバーを押すと脳に刺激が流れる実験で、餌も食べず眠りもせずにヘトヘトになるまでレバーを押し続けるラットをみつけました。この行動は、脳内自己刺激と呼ばれ、人間の快情動に相当するそうです。この経路を調べると、腹側被蓋野(VTA)(A10)から側坐核(NAc)にドーパミンが放出され快感が引き起こされることがわかりました。
さらに研究がすすみ、単純に良い結果というより、予想していた結果より良い結果がでた時に、ドーパミンは多く放出され快感が得られることがわかりました。予想した結果より、良い結果でない場合はドーパミンの放出は少ないそうです。予想した結果と同じ結果の場合ではドーパミンはあまり多くは放出されないそうです。良い結果を予想するだけでもドーパミンは放出されるそうです。さてさて、難しい。
とりあえず、予想していた結果よりも良い結果がでた時にドーパミンが多く放出され、快感という正の情動が得られるということにします。 腹側被蓋野からのドーパミン放出は、側坐核ばかりではありません。前頭前野、扁桃体、海馬、青斑核などに放出されます。前頭前野や扁桃体などへの放出は、側坐核に放出される時と同じ時に放出されるのでしょうか、そして、どういう働きがあるのでしょうか。
腹側被蓋野(VTA)から前頭前野へのドーパミン放出について、さまざまな研究がなされています。前頭前野は、報酬予測誤差を判断・認知すると考えられています。
腹側被蓋野(VTA)から扁桃体へのドーパミン放出についてはあまり多くの研究はなされていないようです。あまりよくわかっていないようです。少ない情報の中でみると、あらゆる感覚の情報を受けて、正の情動か負の情動かを判断している部位ではないかと考えられています。言い方をかえると好きか嫌いかを判断している部位ではないかと考えられています。
新しい研究では、報酬に対する動機付けの増強は、扁桃体によるものであるとの報告があります。扁桃体を負の情動の中枢とばかりとらえてはいけないようです。さらなる研究が必要でしょう。

脳内報酬系の主座は、腹側被蓋野から側坐核へのドーパミン放出と考えられています。

腹側被蓋野からは、側坐核の他に
前頭前野、扁桃体、海馬、青斑核などに出力します。

                    

ICHD3の診断基準によると、性行為に伴うRCVSによる頭痛は、オーガズムの際、あるいは直前とされています。 前述したように性行為による脳内報酬系を考えたいのですが、性行為による脳内報酬系の記載はほとんどありません。 現時点での疑問点をあげてみます。

  1. RCVSの誘発因子となる性行為による刺激は、日常的ないつもの性行為による刺激よりも強い刺激ではないか。
    そのために腹側被蓋野(VTA)より側坐核へドーパミンがより多く放出され、より強い快情動が獲得されるのではないか。
  2. 扁桃体にも同時に側坐核からドーパミンが放出されるのではないか。
  3. 扁桃体に放出されるドーパミンは、どのような役割を果たしているのか。
  4. 扁桃体から側坐核への投射もあるが、どのような役割を果たしているのか。
  5. 扁桃体への刺激が、青斑核を刺激するのではないか。
  6. 腹側被蓋野と青斑核の直接の関係があるが、その働きはなにか?
  7. これに、視床下部や前頭前野がからんでくるのではないか?

夏も終わってしまいました。夢の途中ということで、今回はここまでとします。
機会があれば、来夏、また考えましょう。
Ducros先生、Chen先生、、、、早く、RCVSを解決してくれないかなあ。
最後にちょっとだけ脳内報酬系関連の図を追加します

側坐核への入出力の図を示します。
                    
脳内報酬系のサーキットを示します
脳内報酬系の主座、腹側被蓋野と側坐核を示します。


今回、参考にさせていただいた文献を示します。
また、画像を一部変更して引用させていただいています。

著者タイトル
1Russo SJThe Brain Reward Circuitry in mood disorders.Nat Rev Neurosci. 2013:14:1-34
2Haber SNThe Reward Circuit: Linking primate anatomy and human imaging. Neuropsychopharmacology. 2010: 35:4-26
3中外医学社依存症のニューロサイエンス.Clinical Neuroscience.2004:24
4中馬奈保光遺伝学を用いた線条体神経回路網研究.Brain and Nerve 2012: 64: 881-890
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今年の秋は、長雨や台風が続き、山登りを十分には楽しめませんでした。
9月三連休は南アルプス登山を中止、10月の3連休は下の廊下を中止。
遅れてとった9月末の夏休みも4日間の山旅のうち晴れたのは1日でした。
秋の長雨ならぬ秋の長夢を散々な2016年秋にみることにしました。
10月22日頭痛学会にも参加し頭をリフレッシュしました。
秋の長夢は、真夏の夜の夢にヒントを得ました。
RCVSではありません。
片頭痛のメカニズムについてです。
英彦山、武奈ヶ岳、大崩山、雲仙岳などの山旅でお茶を濁しました。

  

migraine-amygdala/locus ceruleus hypothesis
自説(片頭痛-扁桃体/青斑核仮説)
英彦山編
2016/10/10

片頭痛のメカニズムについては、①血管説、②神経説、③三叉神経血管説など有名な説があります。最後のMoskovitz先生の三叉神経血管説は1985年の発表です。
その後、片頭痛の成因について、これといったメカニズムについて発表はありません。
今秋、真夏の夜の夢でみた可逆性脳血管攣縮症候群-扁桃体/青斑核仮説を片頭痛に持ち込んで、片頭痛-扁桃体/青斑核仮説の夢をみたいと思います。 夢の話ですから、もちろん事実とは異なります。既に、片頭痛と扁桃体について考察した論文はあります。
敢えてチャレンジしてみましょう。

扁桃体は、①情動の中枢と考えられ、また、②さまざまな感覚が入力する部位です。
情動とは、感情すなわち喜怒哀楽です、医学の世界では情動と言うようです。言い換えると、①は感情の中枢、喜怒哀楽の中枢となるのでしょうか。特に、陰性の感情とされている意見が多いようですが、全ての感情とする意見もあります。
視覚、聴覚、味覚、嗅覚、体性感覚などのさまざまな感覚が扁桃体に入力され、各々の感覚の好き嫌い、良い悪い、(情動)を扁桃体で判断すると考えられています。食べ物にたとえると、美味しい食べ物だったら、美味しい、良い、好きなどと判断し、報酬系を促し、また食べたいなど意欲につながっていきます。
嫌いな食べ物だとその逆になります。

片頭痛と辺縁系については、以前、MWHB(mysterious world of migraine brain )で紹介しました。

ここでは、この事はあまり考えずに夢の中へ入っていきます。
片頭痛の患者様は脳の過敏性を持っていると言われています。
世界に目を向けると、片頭痛の人の脳を、Burstein先生がHyperexitable brain、Maleki先生がMaladaptibe brain responses to stressと表現されています。

片頭痛の人の脳は過敏な状態と考えられています。
ここにさまざまなストレスが加わります。
一般的に考えられている精神的なストレスだけがストレスではありません。
ストレスを列記してみましょう。すなわち、片頭痛の誘因となるものです。
環境には、天候・気圧、眩しい光、光の点滅、高地、運動、色などが挙げられます。
食品には、飲酒、赤ワイン、チョコレート、チーズ、ハム・ソーセージ、柑橘類、揚げ物などがあります。その他に、生理、睡眠不足、睡眠過多、不安、うつ、精神的な緊張やその開放などが挙げられます。

扁桃体が、これらをストレスとして捉えます。このストレスによる刺激が扁桃体から青斑核を刺激します。
青斑核からはノルアドレナリンがリリースされ、脳の細動脈が収縮します。これにより、データでは示されないような脳虚血、低酸素が生じ、CSDが惹起されるのではないでしょうか。
CSDにより、片頭痛が惹起される機序としては、CSDが三叉神経血管系を刺激するためと考えられています。
1993年にMoskowitz先生らが、2002年にBoray先生らが報告し、次いでBurstein先生やNoseda先生らの報告があります。

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これまでの説との比較
武奈ヶ岳編
2016/10/23

片頭痛のメカニズムについては、①血管説、②神経説、③三叉神経血管説など有名な説があります。各々を簡単にみてみましょう

①血管説:脳の血管が収縮し前兆が出現、引き続き脳の血管が拡張し頭痛が出現するというシンプルな考え方です。この説は、Olesenらによって、脳血流量が低下している時から既に頭痛が生じていることから否定されました。片頭痛では脳血流量が変化するということで、おおざっぱに受け入れてもいいのではないでしょうか。

②神経説:すなわちCSDにより片頭痛が惹起するという説です。不明の刺激によりCSDが出現します。日本語では拡抑性抑制と呼ばれています。この神経の抑制によって、脳血流量が低下すると言われています。片頭痛の一部を表しています

③三叉神経血管説:もっとも有力視されている説です。トリプタン製剤の効果を説明するのに有用な説です。何らかの不明の刺激により三叉神経血管系が刺激され片頭痛が惹起されるという考え方です

現在では、この3つの説をそれぞれ受け入れて説明されています。何らかの刺激によりCSDが惹起されます。CSDは前兆の原因とされます。CSDは、三叉神経血管系を刺激し、神経血管性炎症を惹起し、血管拡張および肥満細胞より脱顆粒が生じ頭痛を引き起こすというのが一般的な考え方です。
CSDを引き起こす原因として、カリウム、グルタミン酸、脳虚血、低酸素、外傷などが挙げられます。マウスの実験でもカリウムなどが用いられています。では、片頭痛の機序の説明で、必ず最初に出てくる何らかの不明の刺激とは何でしょうか。この事に関しては、あまり記載がありません。不思議ですよね。
秋の長夢では、この不明の刺激に注目しました。その結果、何の刺激でも考えられますが、それがストレスとして扁桃体を刺激すれば、上記の機序がスタートします。

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自問自答
大崩山編
2016/10/30

山の石に質問をもらって、頭痛外来をやめて一日中ボーッとしているishiが答えます。

山の石:「扁桃体が青斑核を刺激して、脳の細動脈を狭窄させるという証拠はあるの?」
ishi:「難しいですね。しかし、青斑核からノルアドレナリンがリリースされて脳の細動脈が狭窄する報告はあるようです。最近は、光遺伝学を用いたなどの実験系も発達しているので、そちらから考えられないでしょうか。」
山の石:「細動脈が狭窄して脳虚血や低酸素を起こしたり、CSDを引き起こすという証拠があるの?」
ishi:「難しいですね。CSDを起こす実験系として、K、グルタミン酸、虚血、外傷などが挙げられているようです。片頭痛の人の脳では、K、グルタミン酸が重要とする報告もあります。これらの論文はとても重要なので、夢ではなく、appendixで紹介しましょう。」
山の石:「そうですか。日本でも頭痛の研究がもっと進まないかなあ。」
山の石:「青斑核を刺激して脳の細動脈が狭窄し、1)片頭痛が起きる場合、2)RCVSが起きる場合とどう区別して考えるのですか?」
ishi:「程度の問題でしょうか、1)片頭痛の場合は、扁桃体-青斑核-CSD-三叉神経血管系を刺激して片頭痛、2)RCVSの場合は、扁桃体-青斑核-三叉神経血管を惹起するという、まあ都合のいい考え方です。」

  

migraine-amygdalaの論文紹介
雲仙岳編
2016/11/06

雲仙平成新山です。
いまも噴煙をあげています。

ここでは、片頭痛と扁桃体の関係について述べた論文を簡単に紹介します。

片頭痛は神経血管系の異常による疾患で、疼痛調節系と辺縁系との間の神経連結の変化が重要な役割を果たしていると考えられています。
片頭痛の前兆をきたすと考えられているCSDは、扁桃体でc-fos発現を惹起します。
CSDの役割や扁桃体との神経連結は、片頭痛を他の慢性疼痛とは異なるものとしています。この論文では、片頭痛の患者において、扁桃体と内臓知覚の中枢である島回との神経連結が、健常者やCSDを伴わない疼痛疾患である三叉神経痛や手根管症候群の患者に比較すると強まっていることが示されています。
つまり、片頭痛の患者でのみ、扁桃体(辺縁系)と島回との神経連結が強まっているということです。このことは、片頭痛の患者では、辺縁系疼痛ネットワークの機能異常があるという証拠であり、繰り返すCSDが扁桃体(辺縁系)を刺激し、島回との神経連結の変化を介し、片頭痛の疼痛を導くのではないかと考えられると述べています。

どうやら、この論文の意図するところは、CSD-扁桃体-ペインマトリックス-片頭痛(疼痛)のようです。私の仮説(扁桃体-青斑核-CSD-片頭痛(疼痛))とは異なるようですが、キャッチボールの可能性もあるのではないでしょうか。夢なので気楽に考えましょう。

著者タイトル
1Hadjikhani NThe missing link: enhanced functional connectivity between amygdala and visceroceptive cortex in migraine.Cephalalgia. 2013:33 :1-34
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2016年夏に真夏の夜の夢( RCVS-amygdala/locus ceruleus hypothesis 可逆性脳血管攣縮-扁桃体/青斑核仮説)をみました。
その後、いつものようにボーッとしていました。
2018年、その続編を考えたいと思いました。
しかし、私自身の身体、心臓、精神がボロボロです。
なんとか頑張ってみたいと思います。
題して、真夏の夜の夢 パート2
RCVS-amygdala/locus ceruleus hypothesis part2
可逆性脳血管攣縮-扁桃体/青斑核仮説パート2です。
そのままです。

RCVSに関しては年に数回、pubmedで検索しています。特にChen SP先生、Ducros A先生の論文をcheckしています。
年に1回、Headache master schoolにも参加費2万円 + 交通費/宿泊費をかけて、参加しています。
しかし、RCVSに関して目新しい論文は、見当たりません。そもそもChen SP先生、Ducros A先生のRCVSに関する論文は最近出ていません。
残念です。
日本からの論文は手に入りにくいので残念ながら全く読んでいません。
2018年は、仙波恵美子先生の論文【慢性痛に対し患者主動型治療が奏功する脳メカニズム:Mesocortico-limbic systemとは?】(ペインクリニック Vol 39 S9-S23 2018)が発表され、半場美智子先生の単行本【慢性痛のサイエンス】(医学書院)が上梓されました。
どちらとも力作で、楽しく読めて、疼痛の世界の進歩を感じました。
---------- 真夏の夜の夢 パート2
RCVS-amygdala/locus ceruleus hypothesis part2
可逆性脳血管攣縮-扁桃体/青斑核仮説パート2
の内容を下記に示します。

今年(2018年)は、山行はドクターストップです。
本来であれば、奥駈に始まり、白神縦走、カムエク・ペテガリを経て、裏劔、南アで締めくくり、これらの山旅で【真夏の夜の夢 パート2 RCVS-amygdala/locus ceruleus hypothesis part2 可逆性脳血管攣縮-扁桃体/青斑核仮説パート2】を楽しむはずでした。
夢が幻となってしまいました。
RCVS-amygdala/locus ceruleus hypothesis 可逆性脳血管攣縮-扁桃体/青斑核仮説、ヘンテコリンな説です。
よくこんなおかしな話を造ったものです。
読んでみて、自分で読んで、少し難しくてバカバカしい、ちょっと面白いかなあ。
では、パート2の世界へ。

1. =扁桃体=奥駈男道編
2018/08/02

奥駈男道は、2017年GW、お盆、2018年GWと私自身の体調や天候のため、3回も断念しました。
そのための準備は膨大でした。
現時点では再挑戦は難しいようです。

①扁桃体の感作・閾値の低下・長期増幅 扁桃体は、RCVS-amygdala/locus ceruleus hypothesis 可逆性脳血管攣縮-扁桃体/青斑核仮説の核心部分です。
扁桃体に関して、疑問に思っていたことがあります。
扁桃体では、感作、閾値の低下、長期増幅(起きているそうです)は起きていないのでしょうか。
例えば、片頭痛には感作という病態があります。末梢性感作や中枢性感作で、アロディニアの原因とされます。
RCVS-amygdala/locus ceruleus hypothesis 可逆性脳血管攣縮-扁桃体/青斑核仮説では、【さまざまなストレスで少し刺激を受けていた扁桃体中心核】と考えていました。
これは、さまざまなストレスが扁桃体中心核に入力され、感作された状態と言えないでしょうか。
痛みには、感覚(部位、程度)と情動からなります。仙波先生は、今回の論文の中で、さらに認知を挙げておられます。
情動の中枢は、扁桃体と考えられています。
全ての感覚は扁桃体に入力され、情動的な判断がなされています。
片頭痛における感覚(部位、程度)における末梢性感作や中枢性感作と同じように、情動においても三叉神経脊髄路核-腕傍核-扁桃体路が、感作されている可能性は考えられないでしょうか。

三叉神経脊髄路核、腕傍核。扁桃体が感作されている様子です。
私は特に扁桃体中心核が感作されているのではないかと考えています。

②扁桃体とエストロゲン
片頭痛では、RCVSを併発しやすいと考えられています。
三叉神経脊髄路核-腕傍核-扁桃体路の情動の部分に、感作が成立すると仮定します。
RCVS-amygdala/locus ceruleus hypothesis 可逆性脳血管攣縮-扁桃体/青斑核仮説 パート1では、扁桃体が刺激を受けやすくなり、ある入力を誤って別の入力と捉えやすくなると考えました。
その考え方とは別の考え方ができないでしょうか、扁桃体が刺激を受けやすくなっており、ある入力を別の入力として捉えるのかもしれません。つまり、「誤って」という部分が消えてしまう考え方です。あまり大きな差異はありません。

もう一つ、RCVSは、女性に多いという特徴があります。
しかも、年齢に産褥期と閉経期にふたつのピークがあります。
エストロゲンの関与を避けて通るわけにはいきません。
閉経後にストレスに対する交感神経-副腎髄質系の反応が亢進し、エストロゲンの補充により改善することが報告されています。
大変興味深い和歌山医大の上山先生の論文があります。
ストレス負荷で扁桃体内側核や視床下部室傍核で、c-fosの発現が増加するそうです。
エストロゲンレベルが増加するとc-fosの発現は低下し、その下流にある副腎や心臓のc-fos m-RNAレベルが低下するということです。
エストロゲンが、ストレスに対して重要な役割を果たしていることが示唆されます。
エストロゲン受容体は、扁桃体内側核に豊富に存在することが知られています。
エストロゲン低下により、扁桃体内側核や室傍核からの交感神経-副腎髄質系への出力が助長されるものと考えられています。
即ち、エストロゲンが、扁桃体内側核や室傍核からの交感神経-副腎髄質系への出力を抑制しストレスによる有害作用を緩和すると考えられます。
逆に言うと、エストロゲンが低下するような状態では、扁桃体内側核や室傍核は刺激を受けやすく、痛みを感じやすい、ストレスを感じやすい、そのためにさまざまな反応が生じるということになります。

上山先生の論文から図を一部改変し引用させていただきます。
扁桃体にはほぼすべての感覚が、PBNを介し入力されます。
心理的な情報も入力されます。
扁桃体はエストロゲンの影響を受けることが明記されています。

上山先生は、この系による閉経期女性のたこつぼ心筋症の発症メカニズムを提唱されました。
※とても残念なことに上山先生は自死されていました。ご冥福をお祈り申し上げます。
ひょっとしたら上山先生が御存命であれば、この系によるRCVSを証明してくれたかもしれません。とても残念です。

仙波先生と半場先生の二人の論文は以前から読ませていただいていました。
いみじくも2018年は、仙波恵美子先生の論文【慢性痛に対し患者主動型治療が奏功する脳メカニズム:Mesocortico-limbic systemとは?】(ペインクリニック Vol 39 S9-S23 2018)が発表され、半場美智子先生の単行本【慢性痛のサイエンス】(医学書院)上梓されました。
少し覗いてみましょう。
最初は仙波先生の論文です。

③仙波恵美子先生の論文【慢性痛に対し患者主動型治療が奏功する脳メカニズム:Mesocortico-limbic systemとは?】(ペインクリニック Vol 39 S9-S23 2018)
慢性痛に対してたくさんの事が紹介されています。
ここでのターゲットは、もちろん扁桃体です。
ふたつ紹介します。
ひとつは、これは以前から紹介している扁桃体中心核(CeA)に入るふたつのルートです。
もうひとつは扁桃体BLAから出るふたつのルートです。

― a)扁桃体中心核(CeA)に入るふたつのルート ―

扁桃体中心核(CeA)は、情動(陰性情動・嫌悪・恐怖・不安)の中枢と考えられています。
扁桃体中心核(CeA)のなかで、特にCeLCは侵害受容性扁桃体とよばれています。
扁桃体中心核(CeA)への入力には、大きく分けると以下のふたつあります。
1)脊髄後角から視床や大脳皮質を経て、扁桃体BLAを経て、扁桃体中心核(CeA)へ入るルートです。間接経路とよばれています。
視床や大脳皮質を経ており、その情報は、少し時間のかかる修飾された情報と考えられ、polymodalと表現されています。
2)もう一つは、直接経路とよばれています。
脊髄後角から腕傍核(PBN)を経て、扁桃体中心核(CeA)へ入るルートです。これは、三叉神経脊髄路核-腕傍核-扁桃体路で、直接的な生の痛覚情報と表現され、生命の本態に迫る経路と考えられています。


扁桃体に入力するふたつのルートを示します。

― b) 扁桃体BLAから出力するふたつのルート ―

仙波先生のここの記載は、私はこれまで読んだことのない内容を含んでいました。
この論文の中で、扁桃体が陽性情動にも関与しているということを示されていました。
これまでも、多くの論文で、扁桃体には陰性情動、即ち嫌悪・不快・恐怖・不安とは別に、陽性情動、多幸、喜び、快なども入力され判断されているのではないかと推測されていました。これをあっさりと明快に示されたのです。
ふたつのルートを示します。

1)BLAからCeAの至るルートです。これは、polymodalな情報です。
前述の間接ルートに近いルートです。
2)BLAから側坐核NAcのルートです。少なからず、このルートがあるそうです。
これは陽性情動となります。
つまり、BLAで陰性情動と陽性情動を判断し振り分けているという画期的な情報です。

                

扁桃体から出力するふたつのルートを示します。
           

④半場美智子先生の単行本【慢性痛のサイエンス】(医学書院)
半場先生は、慢性痛のサイエンスでこれまでの先生の考えをまとめられたという印象でした。
Mesolimbic dopamine systemとして紹介されています。
VTAからNAcやVPへのドーパミン系が賦活されるとオピオイド系が賦活され、下行性疼痛抑制系が賦活される。この系が障害されると疼痛抑制系が機能せず慢性疼痛を惹起するという考え方です。
扁桃体は何処に。P26-29にページを割いて扁桃体についてわかりやすく記載がありました。

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2. =温度覚=白神山系編
2018/08/02

2018年7月の海の日はたっぷり白神山系を楽しむ予定で宿を予約していましたが、キャンセル。

RCVSの誘因のひとつに入浴・シャワーがあります。
真夏の夜の夢 パート1で、入浴関連頭痛として紹介しました。
その時に調べた論文では、必ずしも温水ばかりはありませんでした。水でも起きていたのです。
そして、湯船に足をつけようとしたり、シャワーが前額部や前胸部にあたり、場所もさまざまな状況で発症します。
ここでは温度に着目します。

私自身の頭痛山歩を紹介した際に、解熱鎮痛剤のアセトアミノフェンとNSAIDsの作用機序を調べました。
そこで、体温調整に関して今まで知らなかった知識を得ることができました。
温度の感覚にも、痛みの感覚(感覚と情動)と同じように二つの経路があるそうです。
一つはよく知られている温痛覚の経路です。即ち、末梢神経から脊髄後角、視床、大脳皮質の経路です。
私が知らなかった、もう一つの経路は、視床下部の視索前野に到達する経路で体温のホメオスターシスの維持に働きます。つまり、体温を一定に保とうとする経路です。

詳しくみてみましょう。
皮膚の求心性線維の温冷受容器で感知した温覚冷覚は,脊髄後角ニューロンへ伝達されます。
後角ニューロンから、腕傍核に至ります。
腕傍核から、3次ニューロンは、視索前野に到達します。
脊髄後角-腕傍核-視索前野の経路は、自律性体温調節に関与しています。
(驚いたことに、痛みの情動を司る2次ニューロンの中継地である腕傍核と同じです。)
この経路を遮断されたラットは、皮膚加温に応じた熱放散反応や皮膚冷却に応じた熱産生反応を惹起できなくなるそうです。外気の温度変化に対して対応ができないということになります。

温度の情報が三叉神経脊髄路核(脊髄後角)を経て、
腕傍核へ、そして視索前野に伝わります。
体温を一定に保とうとするホメオスターシスの維持に働きます。

逆に、脊髄後角から視床を経て大脳皮質の感覚野へ至る上行路は皮膚温度の知覚にかかわりますが、この経路を破壊しても自律性体温調節機能に影響しないそうです。
驚きです。
痛みが、識別の知覚と情動という感覚から成り立っているのとソックリです。
しかも、腕傍核を経る経路の方が、生命の本態に関わっているようです。
お風呂に入って、シャワーを浴びて、その温冷覚が、広く知られていた温度覚の経路と並行して、腕傍核から視索前野に至る経路が存在するということです。
これまで、当たり前のことと考え不思議に感じていませんでしたが、全身の皮膚のなかで、ある一部分だけが温度が異なれば、それは異常事態として捉えられるのかもしれません。

扁桃体は、既に感作されていると、お湯や水の信号が、知覚受容体-末梢神経-脊髄後角(三叉神経脊髄路核)-腕傍核に到達し、扁桃体に伝達され、2016年夏に真夏の夜の夢 で仮説を立てたRCVS-amygdala/locus ceruleus hypothesis 可逆性脳血管攣縮-扁桃体/青斑核説が、動き出すのではないでしょうか。

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3. =消化管(内臓感覚)=カムエク・ペテガリ編
2018/08/02

カムエク・ペテガリは、3月に18万円という大金を投じて初めてツアー登山を予約しました。
何故かというと、bearが怖かったから。
しかし、キャンセル。全額戻ってきました。
いっそ、カメラのレンズを買ってしまいましょうか。

私が最初に経験した2名の患者様は、ともに腹部の異和感を発症前に訴えておられました。
内臓臓器(消化管)の異常も関与するのではないかと当初から考えていました。
ここでは内臓臓器の関与を考えてみたいと思います。
内臓感覚について、PETやfMRIを用いて、大腸に伸展刺激を加えて内臓感覚の脳内プロセシングや神経伝達を調べた研究があります。
消化管からの侵害刺激信号は、脊髄神経感覚ニューロンから脊髄後根、脊髄後角、脊髄視床路を経て視床に伝わります。ここから、島・前帯状回・前頭前野に投射され腹痛、腹部不快感、不安、うつを引き起こします。これは、体性感覚が辺縁系に到達する間接経路に相当するものです。
内臓刺激によって活性化する注目すべきもう一つの経路があります。
すなわち、Craigらによって提唱された経路です。Lamina Ⅰから腕傍核に入り、辺縁系および視床下部を賦活化させます。
なんと、内臓感覚も体性感覚の痛みと同じではありませんか。
この経路は、視床を経由せずに扁桃体中心核を活性化させます。これは体性感覚が扁桃体に入る直接経路と同じではありませんか。
腹部に異常を感じていれば、この経路も賦活化され、扁桃体が賦活化された状態となり、RCVSが惹起されやすいのではないかと考えられます。

Craigらによって提唱された経路で、Lamina Ⅰから腕傍核に流入します。
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4. =性交=裏劔編
2018/08/02

裏劔は、これまで2016年2017年と予定しましたが、天候が悪く中止しました。
例年、雪渓などの情報と秋雨前線・台風など天候とにらめっこ。昨年、阿曽原温泉に行けたので、今年は最大のチャンスでしたが、とても残念です。

sexによるRCVS、難しい。RCVSは、RCVS-amygdala/locus ceruleus hypothesis 可逆性脳血管攣縮-扁桃体/青斑核仮説によると扁桃体が病変の主座になっています。つまり、陰性情動です。
ここに風穴をあけてくれたのは、仙波先生の論文です。扁桃体は陰性情動ばかりではないということです。
五感には、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚があります。
扁桃体には、全て感覚(五感)が入力されます。そこで、情動の判断がなされます。
性交は、全ての感覚が関与する特殊といえば特殊な状況です。そして子孫を残すという生命の本態に関わっています。

ここからは全くの推測です。
性交により研ぎ澄まされた感覚が、視床や大脳皮質を経て、扁桃体BLAにpolymodalな情報として伝えられます。
BLAが感作された状態になります。VTAからNAcへの報酬系に加え、BLAからはNAcへ陽性情動が伝わることでしょう。
BLAから、CeAにも情報は伝わっているのではないでしょうか。
男性の性機能を考えると、陰茎の勃起は副交感神経が関与し、射精は交感神経が関与すると言われています。
性交は、前述のように全ての感覚が扁桃体BLAに入力され感作され、副交感神経刺激の状態から交感神経神経の刺激の状態へ一瞬で変化する状況です。
性行為は生命本態に関わる機能ですから、恐らく、射精という情報はPBNを経る経路に入るのではないでしょうか。
この経路は、扁桃体や視索前野やVTAにつたわると推定されます、これらは陽性情動として処理されます。
扁桃体に伝わると、RCVSが惹起されるのではないでしょうか。

どうでしょうか、交感神経の求心路の関与というのは?

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5. =CSD=南ア鋸岳編
2018/08/02

赤沼さんのガイドで行きたかった場所です。
赤沼さんのガイドは、徐々に復活したそうです。感動・脅威です。
赤沼さんのガイドでどうしても行きたい場所は、あかと鋸岳です。

最後にCSDに登場してもらいます。
登山は最終日は、私の場合は、移動日にもなり、軽く済ませます。
CSDは、2017年にとりあげましたが難しい。
極論すると、RCVSの雷鳴頭痛はTVS、RCVSの可逆性脳血管攣縮(収縮)は、CSDによると考えます。
これは、前兆のある片頭痛では、CSDが前兆で片頭痛がTVSなので、順序が逆ですね。
この続きは、またいつの日にか。

著者タイトル
1仙波恵美子慢性痛に対し患者主動型治療が奏功する脳メカニズム ペインクリニック 2018: 39:S9-S23
2半場美智子慢性痛のサイエンス(医学書院)2017
3上山敬司Brain and Nerve. 2012: 64: 1113-1119
4A.D.CraigHow do you feel? Interoception: the sense of the physiological condition of the bodyNature Reviews.2002:3:655-666
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最真夏の夜の夢も、パート2 まで終了し、あまりに長く感じます。
パート1とパート2を振り返り、RCVS-amygdala/locus ceruleus hypothesis、可逆性脳血管攣縮-扁桃体/青斑核仮説を簡単に考えてみましょう。先ず、RCVSの特徴の簡略版に再登場してもらいます。

RCVSの特徴を列記します。
①突然の激しい頭痛を繰り返す。
②誘因:誘因がないこともあります。誘因としては薬剤、入浴・シャワー、性交、排便、いきむなど・・・・。薬剤は、血管収縮物質の使用などが報告されています。
③雷鳴頭痛をきたす疾患の中で、多い疾患である。
④片頭痛の既往がある人が多い。
⑤若い女性(妊娠・産褥期)、閉経期前後の女性に多い。
⑥画像でRCVSを確認することで診断します。初回のMR検査では描出されず、2回目、3回目で診断されることがあります。
⑦初回雷鳴頭痛から脳卒中をきたすまでの平均日数と頻度。脳出血:2.2日(0-12%)、くも膜下出血:4.6日(0-30%)、
脳梗塞:9.5日(6-8%)、PRES:4.0日(8-9%)です。
脳出血は、皮質下で小さいことが多く、くも膜下出血も皮質下という特徴があります。
このようなエピソードはないほうが多いようです。
⑧治療:誘因を避ける。血圧に注意。Ca拮抗剤。
⑨頭痛外来を受診される患者様の予後は良好?。(脳卒中を起こすと予後は悪化)
⑩再発率は5%で、再発が稀というわけではない。
⑪雷鳴頭痛のないRCVSも存在する(約5%)

可逆性脳血管攣縮-扁桃体/青斑核仮説について、上記特徴を用いて考えてみましょう。

段階状況RCVSの
特徴の番号
前段階扁桃体の感作さまざまなストレスにより、扁桃体が過敏となっている。扁桃体が感作された状態。③、④、⑤、⑩
第1段階扁桃体へ
情報入力
さまざまな誘因(感覚)が、三叉神経脊髄路核(脊髄後角)から腕頭核を経て、扁桃体に入力される。②、⑤、⑩
第2段階扁桃体で判断過敏な状態の扁桃体で、入力された情報が処理される。陰性情動・不快or陽性情動・快
ここで、片頭痛のアロディニアのような状況になっているのではないか。
②、③、④、⑤、⑩
第3段階扁桃体から出力
TVSの刺激
扁桃体からの情報が青斑核に入力され、Nad神経が活性化され、細動脈arterioleのレベルで収縮する。ここで三叉神経血管系(TVS)が刺激され、突然の頭痛が出現する。
刺激に応じて、突然の頭痛が繰り返される。
繰り返される雷鳴頭痛
①、⑥
第4段階TVS刺激後の
反応、
4パターン
ⅰ)この収縮によりCSDが惹起されたものはRCVSとなる。
ⅱ)RCV(reversible cerebral vasoconstriction)まで到達しないものもあるのではないか。
ⅲ)TVS刺激による突然の頭痛が出現しないで、RCVに到達するタイプもあるのではないか。
ⅳ)その他
⑥、⑦、⑨、⑪
回復段階終焉。
全ての経過に、prefrontal cortex(特にMPFC)も関与しているのではないでしょうか。

各々の段階をシェーマで示します。


― 前段階:扁桃体の感作 ―

                    
扁桃体にはほぼすべての感覚が、PBNを介し入力されます。
心理的な情報も入力されます。
扁桃体はエストロゲンの影響を受けます。
                    
扁桃体の感作

―第1段階:扁桃体へ入力―

さまざまな誘因(感覚)が、三叉神経脊髄路核(脊髄後角)から腕傍核を経て、感作された扁桃体に入力されます。
どのような感覚でもRCVSの誘因となることが考えられます。
RCVSの誘因は、①性行為・報酬系、②いきむ行為(すなわちヴァルサルバ手技)、③お風呂、シャワー、④ストレス・感情、⑤内臓知覚、⑥交感神経・その他に分けられますが、そのすべてが扁桃体へ入力されます。
各々の経路をシェーマで示します。

                    
①sexによるあらゆる感覚や報酬系が扁桃体へ②ヴァルサルバ手技・圧受容器反射が腕傍核を介し扁桃体へ
                    
③入浴・シャワーなどの温度覚が腕傍核を介し扁桃体へ④心理的情報が扁桃体へ
                    
⑤消化器の情報が扁桃体へ⑥これは、どうでしょう。
交感神経求心路が扁桃体へ

―第2段階:扁桃体で判断―

扁桃体へ入力されたさまざまな情報が、陽性情動・陰性情動の判断がなされます。感作された扁桃体では、判断を誤ったり、方向性を誤ったりするのではないでしょうか。

                    
扁桃体での判断扁桃体からさまざま場所へ出力

―第3段階:扁桃体から出力そしてTVSの刺激―

扁桃体の誤作動の結果、誤った情報が、出力されます。
出力先のひとつに青斑核があり、青斑核が刺激されるとノルアドレナリンがリリースされ、脳表近くの細動脈arterioleが収縮します。
三叉神経血管系(TVS)の刺激により、突然の激しい頭痛(雷鳴頭痛)が惹起されます。
当初は、誘因による刺激が繰り返されると、雷鳴頭痛が繰り返されます。

青斑核の神経からノルアドレナリンがリリースされ、
arteriole(細動脈)は狭窄します。

arteriole(細動脈)の狭窄が三叉神経を刺激します。
つまり、三叉神経血管系が刺激され、
雷鳴頭痛が惹起されます。

誘因による刺激が繰り返されることにより、反応が鈍くなっていきます。また、前頭前野から、その情報は大丈夫だよ、と修正情報が入るのかもしれません。あるいは大脳皮質や視床などからの正確な間接経路からの情報が修正情報として入ってくるのかもしれません。


―第4段階:TVS刺激後の反応―

4パターンが考えられます。
ⅰ)RCVSを惹起するタイプ:TVS刺激によるarterioleの収縮により、CSDが惹起されたものはRCVSとなるのはないでしょうか。
ⅱ)RCV(reversible cerebral vasoconstriction)まで到達しないタイプ:雷鳴頭痛のみで収束し、RCVSを惹起しないもの。
ⅲ)TVS刺激による突然の頭痛が出現しないで、RCVに到達するタイプもあるのではないか。TVSによりarteioleが収縮するが、三叉神経知覚神経の分布状況により、雷鳴頭痛を惹起しないもの。しかし、CSDは惹起しRCVは引き起こされるもの。
ⅳ)その他。雷鳴頭痛もRCVも生じないものなど。

RCVSが引き起こされます。これには、PBN-amygdala-LC系の長期増強とCSDが関わっているのではないでしょうか。

―回復段階:終焉―

全ての経過に、前頭前野(特にMPFC)が関与しているのではないでしょうか。

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