北アルプスの地図を示します。槍ヶ岳、奥穂高岳、剱岳、白馬岳の四つの名山を赤い三角で示しています。
呉茱萸湯 | 五苓散 | 女性三大漢方薬 | |||
私が処方した漢方薬の中で、呉茱萸湯が、一番多いと思います。
発作性の頭痛、嘔気、嘔吐や肩・首の凝りなどに効果があります。冷えにも若干効果があります。当に片頭痛の薬剤だと考えられています。
私が、呉茱萸湯に最初に遭遇したのは、患者様からの一言です。その患者様は、「私の頭痛には、この漢方が効くので、呉茱萸湯を出してください」とおっしゃるのです。
それまで、頭痛外来では、ほとんど漢方薬を使っていませんでした。呉茱萸湯を調べて、それから、患者様にあった漢方を考えるようになりました。頭痛外来の洋式処方で行き詰った時には、次第に漢方を用いるようになりました。(→頭痛と漢方)
呉茱萸湯は、片頭痛や頭部外傷後の頭痛に効果があります。頭痛発作時にも効果ありますが、予防的に投与しても効果があります。
成分は、呉茱萸、大棗、生姜、人参です。呉茱萸とはミカン科の一種だそうです。
では、呉茱萸湯から北アルプスの山の名前を連想してみます。
ごしゅゆ、ごのしゅうゆ、呉の周瑜(蜀の天才軍師、諸葛亮孔明と戦った、呉の名将、周瑜公瑾)、といえば三国志。三国志といえばゲーム、ゲームといえば双六、双六岳。
2008盛夏。槍ヶ岳山荘付近から 裏銀座コースは、ここから双六岳、水晶岳へ向かいます。 |
2014秋。悪天候のため、表銀座コースを断念し、 上高地-槍ヶ岳直登ルート。 槍ヶ岳頂上から西鎌尾根。その先端に双六岳。 |
双六岳は、北アルプスの奥深いところにあります。私が、双六岳に登ったのは2回です。一度目は、北アルプスに初めて登った、上高地-槍ヶ岳-双六岳-鷲羽山-水晶岳-野口五郎岳、いわゆる裏銀座コースの時です。次は、新穂高温泉-笠ヶ岳-双六岳-黒部五郎岳-薬師岳-折立の縦走の時です。
裏銀座コースを登った時、天気がよく、素晴らしい眺望でした。
呉茱萸がはいっている漢方薬に、当帰四逆加呉茱萸生姜湯があります。これも片頭痛に効果があります。
この漢方薬が著効するのは冷えに対してです。特に冬場、しもやけなどに悩まれている方にピッタリです。
頭痛外来では冬場だけに限定して使用されている患者様が多数おられました。寝る時に足元に湯たんぽを使用したり、靴下を2枚履いて寝ている方など効果がありました。
回復期リハビリ病棟で、冷え(靴下を2枚重ねて履いて寝る)で悩まれている患者様に処方しましたところ、冷えにも著効しましたが、腰痛にも効果がありました。
私も55歳5か月になりました。
5の数字から思いつく漢方薬は、やはり五苓散です。
脳神経外科医師のなかで有名な漢方薬の一つに五苓散があります。慢性硬膜下血腫の再発予防などによく用いられます。
私は、片頭痛の予防として呉茱萸湯を最も多く用いました。呉茱萸湯を漢方で片頭痛の予防薬のfirst lineとし、次のグループをsecond lineとします。五苓散は、間違いなく漢方で片頭痛の予防薬のsecond lineの一つに挙げることができます。
特に、片頭痛にめまいを伴った場合、緊張型頭痛にめまいを伴った場合などに有効です。
五苓散は、水をさばく薬剤(利水作用のある薬剤)として効果があります。簡単にいうといろいろな意味で、むくみをとる薬剤でしょう。
こんな使い方はすすめられませんが、次のような用い方もあります。女性の方は冬にブーツを履かれます。夕方になると、むくんでブーツが履きつらくなったりすることはありませんか、そんな場合に有効です。
回復期リハビリ病棟では、足のむくんだ患者様で、電解質異常などがあり、利尿剤をこれ以上追加したくない場合などに五苓散をすこし追加することで思わぬ効果があります。
私自身には、①高山に入り、帰りの列車の中で体がむくんでいるように感じる時とか、②二日酔いの時とかに効果があります。
五苓散の成分は、沢瀉、茯苓、蒼朮、桂皮、猪苓です。
五苓散、この響きから、連想する北アルプスの山は、もちろん五竜岳です。
2009初秋。八方池から不帰の嶮 |
五竜岳へモルゲンロードを歩く |
標識、人間力で運ぶのですね、お疲れ様です |
五竜岳は、北アルプスの後立山連峰(山仲間ではゴタテと愛称されています)の一角を占めます。
私は、八方から入り、唐松岳、五竜岳(五竜山荘に一泊)、八峰キレットを経て、鹿島槍ヶ岳、爺ヶ岳を経て、扇沢に降りました。五竜山荘から、扇沢のバス停まで、1日に約13時間を歩きました。私の北アルプスの山旅のなかで、3本の指にはいる1日に長時間歩いた素敵なロングトレイルでした。
冷池山荘で食べたカレーライス、種池山荘で食べたアイスクリーム、美味しかったです。
頭痛の知識を維持するために2015年日本神経学会に参加しました。場所は新潟です。
昨年は、2回ほど新潟を通りました。一度目は、朳差岳登山の為に、福岡から新潟まで航路をとりました。もう一度は、百名山最後の朝日岳登山、JRで、佐世保‐博多‐東京、新潟、そして、特急かもしかで鶴岡まで、それから、バスで登山口まで移動しました。
今年は、学会。あと1ヶ月半くらい後なら、何処かちょっと山に行けたのに。
頭痛の知識維持のための日本神経学会参加は、今年で3回目です。
春は神経学会、秋は頭痛学会に参加しています。今回、新しい知見はありませんでしたが、刺激になりました。有名な先生のランチョンセミナーに参加しました。これまで、頭痛外来で考えてきた事が整理できました。
RCVSについて、私がわからないことを知りたかったのですが、その答えはありませんでした。RCVSでは、どうして頭痛がするのか、どうしてお風呂やシャワーなどで頭痛がするのか、どうして血管が数日して収縮するのか、どうして女性に多いのか、どうして年齢分布があるのか、、、、、、わからないことばかりです。
新潟駅といえば、ポン酒館。楽しく飲ませていただきました。
ポン酒館では90種以上の新潟県の地酒が楽しめます。
1日目に10杯、2日目に10杯いただきました。10杯で250ml程度だそうです。
おすすめは【地上の星】です。ランキングでは第2位でした。美味しかった。
でも、美味しいお酒を1本買った方が安上がりです。
時間に余裕ができたので、別の事を考えてみることにしました。
とりあえず、漢方と北アルプスシリーズの瞑想。
前回、五苓散で、五竜岳を思い出してみたので、引き続き、後立山連峰を思い出してみることにしました。
後立山連峰といえば、やはり、白馬三山。
白馬三山は、北アルプスの女王の白馬岳、杓子岳、白馬鑓ヶ岳からなります。
漢方で、三剤を並列して考える時にまず頭に浮かぶのは、女性三大漢方薬です。当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸です。北アルプスの女王を思い出すには最もふさわしいと思います。
頭痛外来でも、この3剤にはよくお世話になりました、と言いたいところですが、呉茱萸湯や、五苓散、桂枝人参湯ほどは用いていません。
しかし、各々切れ味があります。いずれも駆瘀血剤です。
当帰芍薬散には、芍薬美人という言葉があるそうです。竹下夢二が描いた色白の華奢な痩せた美人によく処方していたそうです。私も、その言葉を信じて、頭痛外来で、何度も処方しました。
当帰芍薬散は、せり科の植物を含んでおり、セロリを食べれない患者様には合わないようです。ある日、患者様より当帰芍薬散は飲み辛いとのお話があり、桂枝人参湯を処方したところ著効しました。それから、私の頭痛外来では、虚証の患者様でお腹の弱い片頭痛の患者様には、桂枝人参湯をよく処方するようになり、大変好評でした。
当帰芍薬散は、頭痛にも効くでしょうが、虚証の駆瘀血剤として用いた方が良いと思います。
加味逍遥散は、更年期の女性に良いようです。訴えが比較的多く、少しイライラした患者様に処方してみるとぴったり。喜んでいただきました。同じような症状で男性には柴胡加竜骨牡蠣湯がよいとある本で読み、自分で内服してみましたが、全く効果ありませんでした。証が違ったのでしょうか。
桂枝茯苓丸は、当帰芍薬散と対比して、こちらはミロのヴィーナスのような患者様に良いと言われています。実証です。しかし、頭痛外来には、圧倒的に華奢な患者様の方が多く、処方する機会は少なかったように思います。桂枝茯苓丸より、もっと実証で便秘を伴っている患者様には桃核蒸気湯があります。
白馬三山に戻ります。2014年秋、百名山踏破終了後、初の百名山として白馬三山、不帰の劍を登りました。大朝日岳が百名山の締めでしたから、次は白馬山系の朝日岳から白馬三山、不帰の劍を予定としましたが、残念ながら天候が悪く、山行を短くしたのです。
余談になりますが、白馬山の途中の小蓮華山への登山道は、ドラマ【坂の上の雲】のエンディングを飾っていました。患者様と、ドラマ【坂の上の雲】のエンディングを飾っている登山道はどこでしょうかとお話ししていました。とても懐かしく感じました。
栂池ロープウェイから白馬三山 |
白馬大池 |
秋、白馬岳 |
白馬鑓ヶ岳 |
不帰の嶮 |
唐松山荘でおいしい珈琲 |